介護DXが必要な理由とは?解決すべき課題、進め方を解説
2024/8/7
DXとは、デジタル技術を活用して業務プロセスを変革したり、新たなデジタルサービスを創出したりすることです。介護業界においては、根深い課題である慢性的な人手不足を解決する一手になりえます。ただ、ITのことがよくわからなかったり、デジタルに強い人材がいなかったりすると、DXの必要性を感じながらも最初の一歩を踏み出せていない事業者も多いでしょう。介護業界におけるDXについて解説し、具体的な進め方を提案します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して、社会の在り方を変えていくことです。デジタル技術でまず、企業や組織が業務プロセスを変えたり、新しいビジネス(商品やサービス)を創出したりします。すると、そこに属す人々、その商品やサービスを利用する人々の生活も次第に変わっていきます。このような流れで、ビジネスとプライベートの両方を図る取り組みがDXです。
わかりやすい例として、クラウド勤怠管理とビデオオンデマンドを挙げてみましょう。
クラウド勤怠管理を導入すると、勤怠打刻をタイムカードからICカードやスマートフォンに変えれば、自分のタイムカードを探して打刻する手間も、打刻の内容をExcelに手打ちで入力する手間もなくなります。この手間が省けることは人事部門を中心に全従業員の省力化につながるでしょう。
さらにビデオオンデマンドの導入は、動画を視聴したい際にレンタルビデオショップに行くのをやめてビデオオンデマンドに乗り換えることで借りたり返したりの手間が省けます。返却を忘れて延滞金を支払うこともなくなるでしょう。
経済産業省による「DX推進ガイドラインVer1.0」では、DXは次のように定義されています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
出典:デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン
企業や産業への呼びかけとして作られたこのガイドラインでは、DXを企業がビジネスモデルを変革させるためのものとして扱っています。組織のビジネスモデルが変わった結果として、プライベートな生活も変わっていくとされているのです。ただし、この定義づけがDXを難しいものと感じさせているのかもしれません。
2004年にDXを提唱したエリック・ストルターマン教授(スウェーデン、ウメオ大学)は、DXをデジタル技術が人々の生活をより良く変えることと定義しています。
ストルターマン教授の提唱や先ほどの例のように、DXとは人々が考えるよりもわかりやすく、何より身近なものです。あまり難しく考えず、仕事もプライベートももっと楽に、もっと楽しくするために、DXに取り組んでみてください。
DXはどんな業界においても欠かせないものです。中でも介護業界においては、根深い課題である慢性的な人手不足を解消するための一手となりえます。
出典:2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について │ 経済産業省
経済産業省の調査から、日本の人口は1990年から減少の一途をたどっていることがわかりました。これは今後も続き、2050年までに、日本の総人口はピーク時の半分になると予測されています。
特に注目すべきは生産年齢人口比率で、全人口のうち3割弱が高齢者、15〜64歳の労働人口は全体の約半数となる見込みです。国民全員で高齢者を支えるという仕組みは、今後どんどん現実的ではなくなっていくでしょう。
これは高齢者を直接支える介護業界において、特に深刻な問題です。人がしなくてもいいことは機械に任せるという機械化と、デジタル化による業務の省力化によってスタッフ1人あたりの負担の軽減が求められています。
介護業界にてDXに取り組むことには、どのようなメリットがあるのでしょうか。具体的なメリットを理解していると、DXへの取り組みにより積極的になれるでしょう。介護業界でDXに取り組むことには、以下の3点のようなメリットがあります。
業務効率化が期待できる
人材不足を解消できる
介護サービスの質の向上が期待できる
それぞれのメリットについて、詳しく解説していきます。
介護業界におけるDXに取り組む1つ目のメリットは、業務効率化が期待できる点です。
DXへの取り組みに伴い導入するITツールを活用すると、従来人が手作業で行っていた業務を自動化・省人化できるようになります。介護現場の業務は幅広く、中には人がどうしても行わなくてはいけない業務もあるでしょう。そこで機械で自動化できたり代われたりする入力作業や単純作業は機械に任せ、人が行わなくてはいけない業務に人材を割くことで従業員の負担を減らせます。
また業務を効率化させて無駄な残業を減らすことで、残業代の削減も可能です。コストを削減して利益を拡大できれば、従業員の待遇を改善したり、より性能の高いシステムのためにコストを割いたりなどさらなるメリットが得られます。こうすることで、施設を改善するためのサイクルが生み出せるのです。
介護業界におけるDXに取り組む2つ目のメリットは、人材不足を解消できる点です。
DX推進による取り組みで介護ソフトや介護ロボットなどが導入できると、従来時間をかけて行っていた業務や一部の介護業務をロボットに任せられるようになります。こうすることで業務を少人数で回せるようになり、人手不足の解消に効果的です。人手不足が解消されるとゆとりをもって従業員が仕事に取り組めるようになるのはもちろん、経営者側にとっても人件費削減ができるメリットが期待できます。
従業員の負担や残業時間の削減は離職率の減少につながり、経営者側にとっては優秀な人材の確保も容易になります。さらに従業員にとっても体調を整えたり、ワークライフバランスを改善しやすくなったりする効果が期待でき、長期的に働いてもらいやすい環境作りにつながります。
介護業界におけるDXに取り組む3つ目のメリットは、介護サービスの質の向上が期待できる点です。
DX推進の一環であるデータ活用やデジタル技術の導入により、利用者一人ひとりに合ったケアプランを蓄積されたデータを利用して作成しやすくなります。さらに自動化システムの活用によりデスクワークにかかる時間を大幅に短縮できれば、より生産的な業務に余力を充てられるため、利用者のサービスに対する満足度向上にもつながるでしょう。
日本では、今後高齢者がますます増えていく一方、労働力は限られています。サービスの質を担保しつつ従業員の負担を軽減するためにも、介護DXは欠かせないものとなるでしょう。
介護業界でDXに取り組もうとした際、具体的にどのようなものを取り入れるのが良いのでしょうか。DXに取り組みたいのに、的外れなシステムを導入しても意味がありません。介護業界で役立つDXを3つご紹介します。
介護ロボット
ペーパーレス化
グループウェア
それぞれのDXがどのように活用できるのかを、詳しく解説していきます。
介護現場の業務は力仕事が多く、従業員に体力的な負担がかかります。近年このような介護現場では、スタッフの体力的な負担を軽減し、業務効率化を助けるための介護ロボットの導入が進んでいます。最近では介護ロボットを使いこなすためのシステムの開発も進んでおり、今後さらに多くの施設で導入が予想されています。
多くの介護現場では、ケアの記録や申し送り書の記載などの作成が必要です。業務中にメモを取り、後から正式な書類に書いたり、パソコンに打ち直したりしていると、時間が無駄にかかってしまいます。
そこでタブレットやスマートフォンなどの端末と介護システムを連携することで、離れた場所からでもシステムに直接入力できます。記録を電子化できれば書類の印刷や書類管理にかかるコストの削減や、引き継ぎ業務の負担を軽減できます。
チャット、スケジュール管理、タスク管理、ファイル共有、Web会議などの機能を備えたグループウェアは、従業員と離れた場所からでも即座に必要なデータの共有やチャットでの情報伝達が可能です。
介護現場のような忙しい現場において、口頭による情報伝達では周知漏れや誤解が発生しかねません。グループウェアでのやり取りは履歴が残るため、データを後から確認でき、周知漏れや誤解などのトラブルを防げます。さらに共通の進捗管理表やスケジュール表などが利用できるため、業務を効率良く進められるでしょう。
DXは介護業界のさまざまな課題を解決できるものですが、業界にはDX推進を妨げる要因もたくさんあります。まずは次のような問題があることを知り、解決できるものから解決していくことが大切です。
【介護業界のDX推進を妨げる3つの要因】
保守的な経営者、役員層も多い
ITに詳しい人材の不足
金銭的、教育的コスト
介護業界のDX推進を妨げる1つ目の要因は、保守的な経営者、役員層も多いことです。介護業界には保守的な考えの経営者も多く、現状に問題を感じながらも新しい取り組みを避けようとすることもよくあります。
特にDXのような未知のものは敬遠されがちです。だからこそ、本記事前半でもDXは身近なものであると力説したのです。まずはDXが難しいものでも、縁遠いものでもないことを知り、どんな形式でもデジタル技術を活用してみることからはじめましょう。
介護業界のDX推進を妨げる2つ目の要因は、ITに詳しい人材の不足です。ITに関する高度な知識と技術をもつ人材は、社会全体で不足しています。DX推進を主導する高度なDX人材となればなおさらです。DX人材にはデジタル技術に関する知識だけでなく、その業界に対する理解や知見も求められます。
まずは勤怠管理や情報伝達のデジタル化など、簡単なことからはじめてみましょう。職員の中にPCやスマートフォン、Webに詳しい人がいれば、その人に話を聞いてみるのもいいでしょう。
介護業界のDX推進を妨げる3つ目の要因は、金銭的・教育的コストです。新しいITツールやシステム、デバイスを導入するにはコストがかかります。大きなコストをかけて導入したのに成果が出なかったらと二の足を踏んでしまう経営者もいるでしょう。
システムを導入しても、それを職員が使いこなせるとは限りません。現場に立つ職員は忙しく、新しい機器やシステムの操作を覚える時間をなかなか確保できないかもしれません。
まずは若い職員やPCに強い職員に使い方を覚えてもらい、職員から職員へ、教え合っていける環境をつくりましょう。
次の流れを意識すると、介護業界のDXは進めやすいでしょう。介護業界のDX推進を3つのプロセスに分け、各プロセスで何をすればいいのか解説します。
【介護業界がDXを進める流れ】
STEP1.解決すべき課題をハッキリさせる
STEP2.人材の確保やツールの選定を進める
STEP3.DXで業務プロセスを変え、データを取る
介護業界がDXを進める最初のステップは、解決すべき課題をハッキリさせることです。自社や施設でどんな問題が起こっているのかを把握し、問題それぞれの深刻さを考えてみましょう。深刻なもの、解決しやすそうなものから取り組むために、各課題に優先順位をつけてみてください。
介護業界がDXを進める2ステップ目は、人材の確保やツールの選定を進めることです。大企業ならDX推進のためのデジタル人材を雇うのもいいかもしれません。小規模事業者なら、採用のとき、人材がPCやITに強いかも見てみるといいでしょう。
デジタル人材を自社で確保せず、支援サービスを利用する手もあります。デジタル人材が必要になるタイミングは限られています。常駐させるほどではないと感じるなら、雇用するよりも、要所で支援サービスを使う方がコストを抑えられるでしょう。
デジタル人材や支援サービスを導入したら、彼らと一緒に、自社や施設の課題を解決するためのツールを選びます。ツール選びでは機能面・費用面だけでなく、職員にとっての使いやすさ、操作の覚えやすさもチェックしましょう。
介護業界がDXを進める3ステップ目は、DXで業務プロセスを変え、データを取ることです。導入したシステムやツールは徹底活用し、自社・施設全体の業務プロセスを変えましょう。はじめのうちは操作に慣れず、かえって業務時間が延びるかもしれませんが、3ヵ月もあれば成果が出はじめるはずです。
DXに取り組みながら、各システムの導入で何が変わったのか、データも取りましょう。どんなシステムで、どんな課題を解決できたのか。業務にかかる時間や人的・金銭的コストをどのくらい削減できたのか、データを取ることで、新たな課題や次にすべきことが見えてきます。
デジタル技術は難しいものではなく、身近で、多くの人がすでに活用しているものです。ビデオオンデマンドやインターネット通販、ガラケーをスマートフォンに変えるだけでも、立派なDXです。まずは自分の生活を見渡してみて、身近なDXを探してみましょう。
勤怠やシフトの管理など、まずは取り組みやすいことから、デジタル化を進めてみてください。そうすることでデジタル技術やDXに慣れてきたら、高度なシステムを導入すればいいのです。
ただ、ITに詳しい人材がおらず、わざわざ採用するほどでもないと感じる事業者も多いでしょう。そのような場合、必要なときだけ外注する手段もあります。
CloudFitでもDX支援サービスを提供しており、これまでLIONや三菱地所などの大企業はもちろん、数多くの中小企業・小規模事業者の課題を解決してきました。
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